サルディーニャ料理レストラン・タロスと生意気な客【渋谷・東京】

2021年9月後半


-A good cook is like a sorceress who dispenses happiness.

 

-Elsa Schiaparelli 

 

 

-良い料理人は幸せを調合する魔女のようだ。

 

-エルザ・スキャパレッリ

 

 

渋谷駅近くにサルデーニャ料理のレストラン、Tharros(タロス)がある。サルデーニャとはイタリアの島で魚介類と美しく豊かな自然などが有名だ。
 
このお店知ったきっかけはオーストラリアに住んでいた時のルームメイトもとい、オーストラリア的にはハウスメイトが教えてくれた。彼はサルデーニャ出身で、何でも東京のこのレストランのことが地元サルデーニャの電子新聞に載ってたらしい。サルデーニャ料理のレストランが東京に出来たこととオーナーはイタリアに行ったことがあることが記載されていたとのこと。当時このレストランについては聞いたことは無かったが、Google mapへ記しをつけておいた。
 
このレストランのことを思い出したのはそれから2年以上経ってからのこと。印象画の美術展、甘美なるフランスを見に行く際、ふと地図を見て思い出した。
 
しかしこのレストランなかなか人気らしい。ネットを見ると平日お昼でも並ぶことがあるそう。取り急ぎネットからギリギリに予約を入れて少し遅いランチとした。選んだのはフレーグラ(パスタ、大粒のクスクスのようなもの)がメインのコース。前菜から豪華なサルデーニャにゆかりのある料理が並ぶ。コースのボリュームはバッチリある。
 

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前菜プレート

 

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フレーグラ

 

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デザート

 

 

ランチのお値段、2,580円のコースをフレーグラにアップグレード(追加800円)して、

税込み3,380円。

 
大したゆかりがあるわけではないが、イタリア料理にうるさい、イタリアかぶれの私の感想は「悪くない」である。
 
この日たまたまチャットしていたローマにいるイタリア人の友人がサルデーニャ料理のレストランに行ってきたというので、彼女と先に記載したこのお店を紹介したオーストラリアのイタリア人の友人とこのレストランについて話していた。
 
お店の雰囲気もサービスも良い。料理の味も全体的に悪くはない、でも本当に美味しいイタリアンとしては何かがかけている。私だったら●●を足して●●はもう少し多めする、などとプロのような腕はない癖に言いたい放題感想を述べていた。それを聞いた友人達は「自分が食べた訳ではないが、写真からすると納得だ。」とか「性格までイタリア人になったな」と笑っている。
 
ご安心あれ。東京にあるイタリアンでこの価格帯で考えれば、美味しいレストランだ。ただ、何度となくイタリア人の街で彼らと生活した経験や、イタリアへの旅は舌を肥えさせる。それも味覚だけでなく感想も。ただ「良かったよ」で終われない、日本人的には生意気な客なのだ。
 
一方でイタリア的にはどうなのだろうと時々思う。イタリア人が働いているお店に食べに行くと、無意識に店員さんに言いたい放題ということが多かれ少なかれある。オススメは?と聞いて、例えば相手が「魚介類は好きかな?」と始めるとこちらも「あぁ、残念ながらその気分ではないわね。あと辛いのもダメなのよ。」などと相手は彼氏や親友でもあるまいにドラマチックにわがままとおしゃべり全開である。もちろん最終的に希望に沿って勧めてくれたメニューは注文する。そして料理が美味しい時は感謝と素晴らしかったことを伝えるのは忘れない。
 
日本人的な視点で見てうっとうしい上記のやり取りも、あくまで個人的な経験だが、イタリア人だと好印象に取られることも少なくないようだ。むしろ気に入られて良いさらにサービスを提供してくれたりする。特に海外、イタリアの外でアジア人のこういう態度を見るとニコニコしたりケラケラ笑ってることが多い。どうもイタリア人を彷彿とさせて親近感が沸くらしい。
 
ここまで言うと、イタリア人はわがままで自由奔放なのではないかと捉えられかねないではないか、と思う。いやはや、その印象はそんなに間違っていないのではないかもしれない、日本人のマナー的には。
イタリアの仕事を初めて引き受けた際は私もハチャメチャぶりに正直辟易した。
 
しかし、振り返り、角度を変えてみるとやはり彼らにも日本にないマナーと素晴らしいところが多くある。例えば、料理に対しても言いたいことを率直に言うが、それを真摯に受けとめるところも、臨機応変に相手の要望に答えるのもそれなのだ。
 
やはり日本人の私は一生懸命にサービスを提供してくれるタロスの日本人の定員さんに率直な感想は伝えなかったし、彼らも私に聞かなかった。でもイタリア人の私の友人は私の感想を聞いて、それはちゃんと定員さんに伝えたか?伝えないなんてもったいないじゃないか?というのである。
 
ところ変われば常識も変わる。相手を見て対応を変えるのは人種差別だと言われれば否定はしない。しかしながら、様々なバックグラウンドを持つ人達と関わる人は少なからずこういう経験はあるのではないか。一度のランチでだいぶ話が広がったが、外食は日常の中でちょっとした(今となっては)非日常を彷彿させてくれる時間になった。
 
 

Tharros(タロス)
〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-5-2 渋谷SEDEビル1F
6,000円(平均)2,000円(ランチ平均)
r.gnavi.co.jp